「あたいがスリだってさあ調べて」と威勢のいい啖呵と共に裸になったちゃりんこ浮子(夏純子)が、ストリッパー斜旋業「新宿芸能社」の金沢(森繁久彌)、竜子(市原悦子)、踊り子鳥子(瞳麗子)、タマ子(中川加奈)たちのおトソ気分をフッ飛ばした。浮子に満員電車の中で、財布をスラれた金沢が、デパートで彼女を見つけ「芸能社」に連れてきたのである。最初は威勢のよかった浮子も、金沢と竜子に親身になって説教されると涙を流して更生を誓い、「新宿芸能社」に住み込んだうえ、手先の器用なことから手品ストリップを考えつき、人気はうなぎ上りとなった。ある日、浮子の父親で前科十七犯のスリの親分浅草の銀作(西村晃)の身内で左ききの武(米倉斉加年)が、浮子を連れ戻しにきた。父親のいいつけとあって仕方なく浮子は帰っていった。その途中、無意識でスッてしまった女の財布の中に、母親が田舎で仕送りを...
山田洋次が監督デヴューを飾った、シスターピクチャーと呼ばれる低予算中編映画の一編。もとは推理小説だった多岐川恭の同名小説をコメディとして映画化。その新人離れした堅実な演出ぶりは、高く評価された。
新築した家の二階を、借金返済のため若い夫婦(平尾昌章,関千恵子)に間貸しするサラリーマン夫妻(小坂一也、葵京子)だが、家賃を滞納気味な下宿人の行動が腑に落ちない。ふたりをなかなか追い出せないでいる夫だが、ある日彼の母親(高橋とよ)が上京し、投宿している間に二階の住民と仲良くなってしまう。
小坂一也の不器用で情けないサラリーマンが同情を誘う。本作ではその情けないサラリーマンを試すかのように、様々な試練が続発する。後年の山田作品に見られる、主人公を試すかのような加虐性が早くも現れている。上映時間56分という尺ながら、きっちりと計算された無駄のない演出は確かに堅...
大作家を夢みて下手な小説を書きためているウダツの上らない植田順平には、山師の熊本泰造と助手の直子がついていて、あやしげな生活を送っている。今日も、植田はとある公会堂で有名小説家と称してトクトクと自分の小説を話しはじめた。その話とは--。仕事と恋に絶望した週刊誌の記者植島順一が帰郷する車中で知り合った少年次郎の強引なすすめで途中下車したところ、その直後、列車が転覆して、植島は命びろいした。次郎に不思議な予知能力があることを知った植島は、次郎と一緒に帰り、再び仕事を始めた。それからというもの次郎の霊感のおかげで、特ダネは掴むし、かねてから好意を寄せていた同じ社の直美とも結婚できるなど、とんとん拍子に出世していき、ついにはかつての編集長熊田と地位が逆転になった。そんなある日、植島は編集のことで難題が持ち上がり、次郎に相談しようと帰宅したが、次郎は「も...
周一郎が上京したあと、丹野家は丹野夫人、周一郎の許嫁万津子、画家の江木高代、風巻シズ、大学の研究室に勤めるインテリ南部光江、婆やと全く女だけになった。或る日、周一郎の学校長の紹介で、瀬戸内海の孤島から来たという矢田八郎が二カ月契約で強引に住み込んだ。江木高代はすぐ八郎と飲友達になったが、万津子は八郎とよく口論した。或る夜怪しい男が風巻シズの部屋をうかがっているのを八郎が発見したことから、彼は信額の的となった。井野川鉄子はシズと井野川社長の関係を知り、丹野夫人を通して八郎に見張役を命じた。高代が東京のデパートで個展を開いた時、周一郎が芝山順子をつれて訪れた。また周一郎が風邪をひいた時、順子が看病をした。これを聞いた丹野夫人は大急ぎで万津子を上京させた。万津子は危険な近親結婚をやめるのが本当の愛情だと周一郎にさとされ、淋しく帰郷した。契約日数が過ぎ、八郎...
小学生のピンちゃんに、新しいお母さんが来た。父親の日雇亀吉が怪我をしたとき、同じ日雇のツネが手伝いにき、そのまま一緒になったのだ。ツネには連れ子があり、姉の鳥子はレストランで働き、サラリーマンの井上と恋仲だ。兄の実は住込の商店員だ。ツネは暮しを助けるためチンドン屋のビラ配りになった。ピンちゃんは仲間からそれを囃し立てられ、恥かしかった。が、ツネが学校や父兄のもとへ抗議に行き、先生が職業に貴賎はない、どんな仕事でも一生懸命やる人が偉いのだと皆にさとしたので、ピンちゃんは堂々と母のことを綴方に書くまでになった。実君が主人の金二万円を落すという事件が起った。ツネはちんどん屋のコンクールに出場し、その賞品で金の返済をと思ったが、ツネがトチって落選してしまった。長屋の連中は、同情して資金カンパを始め、ツネは金を返すことができた。鳥子は転勤する井上と結婚して...
城南大学の名物男、ヒゲの応援団長ゴンさんは、次期応援団長をガンさんに譲って、ヒゲを剃って卒業していった。ガンさんはそのためヒゲを生やしたのだったが、お洒落をモットーとする銀座の洋品店主の親爺さんから勘当されてしまった。しかし、幸いミス城南の山本和子の家に下宿させてもらい、和子の美しさにひかれたが、和子には既に野球部の吉井君という意中の人があった。谷川教授の一人娘圭子は、スケート部の学生大山君という恋人があるのに、恋愛心理学研究の材料にガンさんを使い、彼にひかれていった。しかし、ガンさんは応援団長の責務はスポーツばかりではないとの趣意の下に、和子、吉井、圭子、大山の各カップルの恋も応援するのであった。さらにガンさんは後輩竹田君の姉で芸者となった染をかばって下宿を提供したことから、女子学生の非難の的となり、大事なヒゲを剃り落とさせられた。しかしヒゲはなく...
雑誌記者の神谷佳代子と遊覧飛行機のスチュアーデス保坂恵美は、同じアパートの一室を借りるほどの大の仲よし、そしてこの二人には、更に自動車の女セールス田島敬子という親友がいた。ところが、このトリオに思わぬことからヒビが入ってしまった。というのは佳代子が、母貞子の切なる願いに一たんは山田誠一との見合を承諾したのだが、仕事の上で知り合ったシナリオライター谷信策のことが忘れがたく恵美に代役を頼んだ。一方、誠一の方も同じ自動車のセールス仲間の敬子に心ひかれていたので、親友の谷に身代りを頼んであった。しかしこんなこととはツユ知らぬ佳代子は、恵美が見合いの相手を好きになったと聞いて祝福してしまったからだ。この二人の仲を心配した敬子が谷の部屋をたずねて見ると、黄色いスカートをはいた美人が谷とむつまじげにしているのを見て二度ビックリしてしまった。これを聞いて喜んだのは...
山田は銀座界隈のコールガール組織のボスだ。山田の名簿には未亡人明子、ビキニスタイルの珠子、人妻の佐和子をはじめとして種々な階級の女性の名が書いてあった。ある日、客引のカードにひかれてやって来た青田と赤井はそこでいつも飲みにいくバーのホステスあや子に会った。あや子は店を自分で持つために、内緒でコールガールを、しているのだった。また青田の相手はスポーツカー欲しさに、身体を売っているお嬢さんズべ公のマ子だった。一方山田は女子大生克子を金の力でくどきおとし、コールガールの中に引きいれた。そんなうちに、マ子と一夜をすごした青田はすっかりマ子にほれこみ、後を追いまわした。しかしマ子はもともと金のために身体を売ったドライな女、青田など眼中になかった。ある日マ子はためた金で買った車でドライブする途中、青田にみつかり、ハンドルをきりあやまってガードレールに追突して死ん...