森鴎外の同名短編小説を熊谷久虎が監督した時代劇。熊谷は安達伸男とともに共同で脚色も担当している。前進座と東宝が提携して製作され、特に映像や美術などの高いクオリティが評価された。1959年、1961年、1993年にそれぞれテレビ版が作られている。
肥後の藩主である細川忠利が逝去し十八人もの家臣たちが殉死した。家臣の一人である阿部弥一右衛門も忠利の生前に殉死を願い出たが、許されずに生き延びていた。家中の者たちは陰で弥一右衛門を責め立て、ついに彼は家族の前で切腹自殺を図った。身分を落とされた弥一右衛門の長男権兵衛は、忠利一周忌の席上で断髪し墓前に供えるが、縛り首の刑に処せられてしまう。これを不服とした阿部一族は、廷内に立てこもるのだったが…。
岡谷町は長野県諏訪湖のほとりにある。湖上を諏訪町から定期船がやってくる。松崎親子は今年大学を出て、この町の小学校に赴任した新米の先生だ。クラスには、照男三平など腕白小僧がそろっていた。--照男の家は貧しかった。父浦島定二郎は国鉄の機関士だ。母親の美子は永い間、寝たっきりである。子供が四人いた。美子の姉お郁が諏訪からやってき、妹の病気が直るまで子供らを預ろうと申し出た。照男だけは母と別れるのをいやがった。父はその気持を察し、彼を手許に残すことにした。お郁は病気見舞いに一羽のカナリヤを置くと、子供らを連れて定期船で帰って行った。照男は夕暮れの船着場で弟妹たちをいつまでも見送った。--親子三人だけの生活が始った。照男の学校での腕白は一向におさまらない。--松崎先生の弁当箱に蛙のオモチャを入れて困らせたりした。松崎先生は照男に愛情を感じ、どこかゆがんだ...