松坂慶子主演、木下惠介脚本による不朽の名作ドラマ。熊本阿蘇を舞台に、1人の男を愛したヒロイン糸子の13年にわたる“愛と悲しみ”を描いた、木下惠介「人間の歌」シリーズの第16作。木下が第4作「冬の雲」以来、約3年ぶりに脚本を手がけた。物語は昭和37年(1962年)から始まり、話数が増すごとに「そして、1年…」という展開で進展する。糸子を演じる松坂のほか、寺田農、市原悦子、地井武男、小坂一也といった実力派の面々が脇を固める。1971年作品。
【ストーリー】
昭和37年の夏。阿蘇山のふもとの街道沿いに1軒のドライブインが完成しつつあった。近くの温泉場で旅館を経営する池月巴(市原悦子)が、結婚する娘糸子(松坂慶子)のために建てたものだった。旅館の板前片倉修二(寺田農)との結婚を2日後に控え、糸子は幸せな気持ちでいっぱいだった。だが、その夜、異様な顔つ...
篠ノ井珠子(市原悦子)は、娘正美(宮沢りえ)と二人暮らし。夫の浮気が原因で離婚し、白芳園の花嫁介添人になった。本人は誠心誠意務めているつもりだが、何かとドジな珠子は仲間の悩みの種だった。 今回、珠子が担当する新婦山崎久美子(石田えり)は、新郎吉本幸一(葛山信吾)よりひと回り年上。新郎の母親吉本恵子(五大路子)はしぶしぶ結婚を認めたものの、自分と8歳しか年が違わない久美子に幸一が取られると思うと面白くない。その上、雑誌の編集者である久美子は、締切が式と重なったからと携帯電話を持ち歩き、所構わず仕事の打ち合わせをすることでまわりのひんしゅくを買う。 そんな時、久美子側のただ一人の親族、父親山崎武志(今福将雄)が現れた。みすぼらしい武志の姿に、新郎側の親族は嫌悪感をあらわにし、久美子のことが引っかかっている恵子は、結婚を止めさせようとまで言い出す...
傷害事件で服役中の母を持つ港町酒場の歌手と貧乏牧師の前途多難な2人の恋物語。川谷拓三が貧乏牧師役をリアルに演じたが、演出がその「リアルさ」を理解しない場面もあったという。「こんなエピソードがある。川谷拓三がどこかのテレビ番組で牧師役を演じたことがあって、そのとき、長々と説教をたれるシーンがあった。川谷拓三はその説教を、訥々とした感じでしゃべり、ときには言葉につかえるようにして演じたらしい。ディレクターはストップをかけ、「もっとしっかりセリフを覚えて、流暢にしゃべるように」と指示した。川谷拓三のしゃべりは、かれなりに計算されたものだったのだが、アホなディレクターは理解できなかった。むろん川谷拓三はつぎの本番で、ディレクターの要求どおりに演じた。これはひとから聴いた話で、ぼくは番組も見ていない。ただ、そのときのシラケたようすは手にとるように分かる。川谷拓...
主演の中村敦夫の足の怪我で休止していたヒットドラマの再スタート版。阿藤海(阿藤快)のテレビデビュー作。各回のサブタイトルは以下のとおり。第1回「馬子唄に命を託した」、第2回「暁の追分に立つ」、第3回「水車は夕映えに軋んだ」、第4回「地獄を嗤う日光路」、第5回「夜泣石は霧に濡れた(誤り…夜泣き石は霧に濡れた)」、第6回「女郎蜘蛛が泥に這う」、第7回「海鳴りに運命を聞いた」、第8回「獣道に涙を棄てた」、第9回「錦絵は十五夜に泣いた」、第10回「飛んで火に入る相州路」、第11回「駈入寺に道は果てた」、第12回「九頭竜に折鶴は散った(「九頭竜」にルビ「くずりゆう」が付く)」、第13回「怨念坂を螢が越えた」、第14回「明鴉に死地を射た」、第15回「木っ端が燃えた上州路」、第16回「和田峠に地獄火を見た」、第17回「雪に花散る奥州路」、第19回「冥土の花嫁を討て...