1961(昭和36)年 東映 1961(昭和36)年キネマ旬報ベストテン30位
<原作>富島健夫「雪の記憶」
列車の中で、「アイタシ スグカエラレヨ ユキコ」という電報を握りしめて、大学生の小島海彦(水木)は久し振りに帰郷の途にあった。
4年前の高校1年の3学期に、海彦は病弱な父(加藤)と2人で、魚の行商をしている兄夫婦(中山山本)と一緒に小さな港町(柏崎と推定)へ移って来た。
そして、彼らは鄙びたあばら家に移り住むことになり、海彦は長岡市にある男子高校へ転校した。
転校した最初の朝である。海彦は通学する汽車の中で、セーラー服の美しい少女(佐久間)を見掛けた。
少女もまた、じっと海彦を見つめていた。それ以来、毎朝その少女に会うことが出来ることを、彼は幸福に感じるようになった。
海彦は朝鮮半島から引揚げて間もなく、母を亡くしていた。だが、少女を...
ママは性格の違いが原因でパパと別れた。手許に引き取った六人の子供達を飢えさせることなく守ってゆくために、ママは早速働きに出なければならなかった。幸いある放送局に勤めることができたが、かよわい女の身にとって重い録音機を肩に担いで取材に出歩くのは決して楽な仕事でなかった。しかし、ママは頑張った。そんなママにやがて第一の試練が訪れた。次男の孝が原因不明の急病で嘘のようにあっけなく息をひきとってしまったのである。ママは声をあげて泣き続けた。それから八年--孝を除いた五人の子供達は立派に成長した。だが、仕事と家庭に追いかけられてママは相変らず目の廻るような忙しさだった。ある日、三男のトシオから電話があった。「あのねえママ、おうちが燃えてるの」ゆっくりしたトシオの声にしばし意味がわからなかったママも、事の重大さに気づくと思わず顔色を変えた。発見が早かったので、屋...
前の夫と別れ、娘で大学生の加津子と二人で暮らしていた奈津子は、娘を連れて新聞販売店を経営する奥村洋次と再婚。その時から、加津子、美紀、洋平の血のつながらない同士の子供たちと出戻りの小姑、実家を離れて住み込みで勉学と両立させながら働く新聞配達員たちに囲まれる日々が始まった。これらの人々と奈津子を温かく見守る兄、叔母、姪らとふれあい、明るく生きる奈津子を中心に、夫婦親子仲間のそれぞれの間の愛情のあり方を描いた。
富士山の麓にあるとある町。小沢しげはそこで洋裁店を営んでいる。彼女は、長女の睦子、高校一年の秀一、それに浩二の三人の子供をかかえ、夫亡き後の生活をミシンを踏んで支えているのだ。--ある日、睦子は職員室で書類の整理をしながら、自分の戸籍謄本に「継母しげ」の名が記されているのを見た。藤本先生は静かにこう話してくれた。十八年前、睦子の父は製紙工場を経営していたという。実母は弟の秀一を生むと間もなく産褥熱で亡くなった。父は後添えとしてしげを迎えた。そして応召を受けて戦死。その時しげは浩二をみごもっていた。それから今まで、しげは三人の子をかかえ苦しい生活を続けて来たというのだ。睦子の胸には感動がわいた。--睦子は隣村の小学校の教師となった。だが、秀一は東大を再びスベった。彼は、炭坑に行くと言って家を飛び出そうとした。睦子は秀一に戸籍の秘密を話した。秀一は、自分...