“男の紋章“シリーズで好評を博した高橋英樹の新シリーズ化を狙った第1作だが、興行的にふるわずこれ1作で終わった。政党の大物の書生政吉は、主人を殺され自分の非力さを悟り、ヤクザ修行の旅に出て苦しい修行の末、一人前のヤクザとなって帰ってくる。
湯本の町、賭場で勝ち続けていた左腕のない渡世人朝吉は幽かに聞える弾き語りの三昧の音にひかれて座を立った。朝吉はそのお安の声が三年前死んだ女房お千代と生き写しなのに魅せられたのだ。朝吉はお千代が侍稲葉新吾に落籍される直前に一緒に故郷の小見川へ逃げたが、苦労をかけて死なせた事をお安に語った。お安の夫徳次郎は江戸の宮大工だが腕をいため養生に来、金に困って流しに出ていた。お安の話を聞き朝吉は金を出してやり、徳次郎の腕もお安の看病で殆ど直った。朝吉は賭場で負けた上に偽金を見破られ竹松、卯之等に追われ、出遇ったお安に別れの言葉を残して去った。竹松はお安から朝吉の行方を聞こうとし誤って殺して了った。徳次郎は朝吉を女房の仇と思い小見川へ行き、また竹松等も朝吉を追って来ていた。徳次郎は朝吉の子千代松をそれと知らず遊んでやったりした。お千代の命日に朝吉は家へ帰ったが、竹...
大正末期、大阪天満にある大聖寺一家では、二代目中部伊之助の初七日に一家三代目を決めるべく、一家内、親戚関係者等が一同に集っていた。その中には、扇山一家大島組親分大島清治、それに大聖寺一家三橋組親分三橋鉄男の姿もあった。阿部野の扇山一家と天満の大聖寺一家、そして生駒の堂本一家は、まわり兄弟の間柄にあったが、後目をめぐって大聖寺一家が二つに割れ、扇山、堂本一家にもその余波が波及した。大聖寺一家の三代目は、遺言により代貸の半田謙三と一家内で決定したが、分家を仕切る三橋だけがこれに反対していた。と云うのも、芸者あがりの二代目の女房おしまを半田が狙っていたため、一家が物笑いにならないようとの三橋の心づかいからだった。そして、遂に現場をとらえた三橋は半田を傷つけてしまう。数日後、三橋は後のことを妹あいの亭主である清治に頼み自首するのだった。一方、半田はこの不始...
渡世の義理から人を斬った文吾は、七歳になった息子の健一を連れて追手の手を逃がれていたが、旅から旅への文吾の顔には疲れと暗さが刻まれていた。とある飯場で、岩崎木材を女手で切り盛りする健気な娘美樹に雇われた文吾は、土地の顔役富高組の圧力と戦わねばならなかった。美樹の勧めで健一を小学校に入れた文吾は、たまたま、富高の世話を受けているかつての女房奈津江に会ったが、夫婦のヨリが戻るわけでもなかった。酒びたりの奈津江に健一を任せる気にはなれなかったのだ。文吾を仇と狙う鎌鼬の辰という男が、この飯場に現われたのはそんな時だった。ある日、富高組が通学列車もろとも鉄橋を爆破して、岩崎木材の積み出しルートを潰そうとしている計画を奈津江から知らされた文吾は、列車に乗っている健一の命を守るためもあって、富高の計画を未然に防いだのだが、奈津江とは健一を挟んで再び対立するのだった...