「教室の子供たち」「絵を描く子どもたち」など教育記録映画の名作を次々に発表し、また、長編劇映画デビュー作「不良少年」では、斬新な手法と自由な感性が絶賛され日本のヌーヴェルヴァーグの旗手として注目を浴びた羽仁進が、前作「ブワナトシの歌」同様にオール外国ロケで制作したドキュメンタリータッチの野心作。羽仁監督と公私にわたるパートナーで、女優として脂の乗っていた左幸子が、異国で生きがいに目覚める中年女性を溌剌と好演した。亡夫との息子を連れ、写真だけの見合いでアンデス山中の太郎(福田)に嫁いだタミ子(左)は、誇りを取り戻すべくインカ帝国の財宝探しに躍起になる夫の傍ら、水道も通っていない貧しい土地で農業に懸命に励む。
目明かし時代の浜吉の上役井島の妻が金欲しさからヤクザの妾に。井島は、妻への恨みからヤクザ一家と騒動を起こすが、ついには捕り方まで斬り、殺人犯となってしまう。浜吉は涙を呑んで井島を倒す覚悟を決める。
予備校生の中村亮二は夏休みの間、ニューヨーク駐在の商社マンの兄、英一のもとに居候を決めた。グリニッジビレッジのバーで日本人ピアニスト、木村と知り合った亮二は、そこで、チンピラに絡まれていた北野順子を助け、木村は怪我をしてしまう。帽子のデザイナーをしている順子は、トランペッターを目指す弟の徹とニューヨークに来ていた。数日後、木村、亮二、徹は、日本料理店で、移民局のガサ入れを受け、ピンチのボーイ、松宮健太郎を助けた。健太郎は料理店の跡取り息子だが、ワーキングビザを持たず、無許可で働いていたのだ。英一の命令で亮二はロスアンゼルスに行かされ、健太郎や徹を誘った。亮二は順子も誘いカタリナ島でバカンスを楽しみ、年上の彼女に思いを寄せるようになる。やがて夏が終り、亮二、健太郎、駐在を終えた英一は東京に戻った。そして、亮二は、英一と順子が恋人同士であったこと、死ん...
酒匂基次と越秋穂は親友だ。秋穂は明朗な青年で母の正子のヘソクリを借りては金貸し業をする学生商人。基次は、広告代理店の重役である父をもちながら病床にある母の延子を置いて、かたくるしい上流社会の空気を持つ家庭からとびだし、盲目のマッサージ師の好子と世帯をもっていた。酒匂家では、家族会議が開かれ、基次は母の延子が生きている間だけという条件で家に帰って来た。酒匂家で静かな歓迎を受ける二人に、小さな魂が宿った。二十一歳の父が誕生するのだ。一方秋穂は美貌のクラスメート恭子と結婚を約束していた。その頃、基次の母は息をひきとった。基次は最初の契約通り、酒匂家を出てアパートに移った。やがて酒匂家には初孫が誕生した。その幸福感を味う暇もなく、基次は、赤ん坊を背負った好子が交通事故に会うという惨事に出くわした。落胆した基次を慰める家族の言葉に、新しい生活に入るとみえた基次...