2つの事件を結びつける恐ろしい偶然…刑事が恋人達の最期を追うとき、予期せぬ真相が浮かび上がる…。10月末、愛媛県松山市郊外の戸倉地区で、一人暮らしの未亡人山根スエ子が自宅で絞殺された。犯人は現金を持ち去っており、強盗殺人と予想された。この時、捜査に当たった愛媛県警察本部捜査一課長の香春銀作(三浦友和)はこの事件が予想以上の難事件になること、この長閑な風景が重要な意味を持つことをまだ知らない。その少し後の11月、佐賀県唐津市の港町呼子にある「鶴屋旅館」に東京在住の小説家、小寺康司(寺田農)が宿泊していた。小寺の部屋の世話をする仲居の真野信子(高岡早紀)は、尊敬する小寺の世話をすることを誇りに思い、机上に残された文章を読んでは感心していた。信子には同人誌『海峡文学』を主催する小説家志望の下坂一夫という恋人(佐野史郎)がいた。信子は下坂を献身的に愛し...
激しい雷雨の夜、婚約者の野々村夕子に逢いに屋敷を訪れた佐川和彦は夕子の母から、半月前に起きた夕子の事故死を知らされる。夕子の死を信じられぬまま屋敷に泊まることになるが、雷鳴と共にかすかに女の泣き声が聞こえてくる。ある部屋の前に立ち止まりドアの鍵穴を覗くと誰かが座っている。その部屋に入り、クローゼットを開けるとそこに夕子が…その瞬間和彦は後方から誰かに殴られ気絶した。気がつきふと部屋の窓の外を見ると夕子の姿が――。
婚約者に逢いに行ったまま戻らない兄和彦の消息を訪ね、佐川圭子は恋人の高木浩と共に和彦の婚約者だった夕子の屋敷を訪れる。だがそこで屋敷の主である夕子の母から夕子は死亡し、和彦は既に帰ったと告げられる。その言葉に疑惑を抱いた圭子は屋敷を探るうちに、ある部屋で和彦が夕子に贈ったはずのプレゼントを発見し、さらに夕子の墓のそばで、血の付いた和彦のカ...
ビルの谷間のゴミの中に倒れている皮ジャンを着た青年が、起きあがって歩きだす。私鉄の踏切で何者かにドスで刺されてしまったこの青年が、傷口を押さえながら歩道橋を上っていくと、少女が川に身投げするのが目にはいったのであった。青年は、少女を助ける。彼女は朝鮮語をしゃべる--。山本と名のる自動車修理工のこの青年は、李史礼という本名をひたかくしに隠して生活している在日朝鮮人で、少女はやはり方順紅という名前の在日朝鮮人であった。史礼は順紅にも自分が在日朝鮮人であることを隠していたが、病院に見舞いにきてくれた彼女に「俺は李史礼だ……朝鮮人だ」と、ついにほんとうのことを告白してしまう。退院した史礼は、順紅といっしょに行方不明になっている彼女の父親を捜すが、見つかりそうもない。そんなある日、史礼は自動車修理工場の経営者から「修理工場を新しく一軒ふやそうと思っているのだが...
『蘭と狗』(らんといぬ)は、中村勝行著作の時代小説。1996年に講談社から出版された。
概要
蛮社の獄後、牢屋敷を脱獄した高野長英の逃亡生活と、彼を恨む岡っ引の追跡劇を描く。逃げる蘭=蘭学者長英、追う狗=岡っ引瓢六。
あらすじ
1839年、同心小林藤太郎とその岡っ引瓢六は蛮社の獄により蘭学者、高野長英を捕縛した。自首を考えていた長英を捕縛することで、重罪にして彼を合理的に闇に葬ってしまおうという幕府の思惑が絡んでいたからだった。
納得のいかない長英は非人栄蔵を唆して火災を起こさせ、どさくさで脱走する。しかし、栄蔵が放火するところを瓢六の妻が目撃してしまい、彼女は栄蔵と共に焼死する。
瓢六は放火の主犯は長英と知ると怒り狂い、藤太郎の岡っ引を辞め、追跡の旅に出る。彼の執念で長英の逃亡範囲、援助者は徐々に減っていき、長英は一人追い詰められる一方、瓢六の...