伊豆修善寺には温泉旅館で賑わう温泉街と、閑静な別荘地との二つの顔がある。 和泉温夫(水谷豊)は、修善寺の温泉旅館「金龍」の婿。妻に先立たれ義母の女将清子(朝丘雪路)にしごかれて旅館業を習いながら修善寺駐在所の巡査をつとめている。中学一年の一人娘真澄(米澤史織)が見かねて世話を焼くほどのお人好し警官だ。 東京の和菓子の老舗「よし福」の社長が、修善寺の自分の別荘で殺された。
空き巣の居直り凶行とでも見られたが、社長と特別の関係にあった「金龍」の仲居のゆう子(吉野真弓)の挙動も疑わしい。温夫は中伊豆署時代の同僚で今は警部補に出世している婦人刑事末松千賀子(吉田日出子)と協力、事件を追うが、続いて東京では「よし福」の常務が、さらに修善寺の別荘でゆう子までが殺される…。
最後の青函連絡船が出港した青森港で出会った三人の女。意気投合し、青森を旅する三人を謎の男(藤岡琢也)が尾行するサスペンス。「青函連絡船終航式の日に乗船場で知り合った企画会社の社長藤沢真紀(坂口良子)と主婦村上さと子(朝丘雪路)、風俗嬢らしい五十嵐薫(大西結花)という三人の女性。東京からやって来た三人は意気投合して津軽地方の旅を続けることになるが、表面上は明るく振る舞ってはいるものの、それぞれに問題を抱えていて…。そんな三人を初老の男性板倉剛造(藤岡琢也)が尾行していた。実は板倉は15年前、連絡船から男性が突き落とされて殺された事件を追い続けている刑事だった。旅の途中で、真紀がすれ違いばかりの夫と別れて、部下の沢木稔(金田賢一)と再出発することを考えていることや、薫は実は政略結婚させられそうになって家出した富豪の令嬢であること、実はさと子が15年...
駆け出しの出張料理人である主人公神崎直(酒井法子)が、依頼人の舌はもちろんその心さえも納得させる究極の料理を作るヒューマンドラマ。直が常々心掛けていることは、依頼人の心に届く料理作り。可愛がっている若い料理人が殺人容疑を掛けられたと知った直は、その無実を信じながら、ワケありのお客たちの依頼に応じる。そして、綿密なリサーチをした上で、いよいよ本番の出張料理に臨む。果たして、様々な苦悩を抱えながら人生を歩んできた依頼人に贈る直の感動の料理とは。殺人事件を絡めながら、ユニークな料理法、素材なども紹介して展開する。
出張料理人の神崎直は、可愛がっている板前修業中の矢萩映太(川本貴則)が伯父殺しの容疑を掛けられたまま逃走していると知り、愕然。直は、映太の無実を信じながら、料理の依頼を誠心誠意こなしていく。そんな中、映太がメロンを万引きしたことから逮捕される。...
九州の元大名の若殿雄太はテレビの美術監督だが、家老半太夫の娘でテレビショウの踊り子みどりを秘かに恋していた。ところが半太夫は家運挽回のため雄太と実業家の娘洋子との縁談を計り見合いさせようとする。雄太は姉かほる、親友のプロデューサー昭平の協力で、みどりに愛情を打明けたが、みどりは父の立場を考え思い悩む。そこで、かほるは九州の父凡斎のところへ行き、家宝の兜を売って家運を挽回、雄太の結婚問題を解決するよう勧めた。すると凡斎は、かほるに西郷平八郎を結婚の相手に勧める。幼馴染みの二人は、すっかり意気投合する。一方、昭平は雄太を助けるため雄太になりすまして洋子と見合いする。昭平は馴染み芸者の幾千代を呼んで、いちゃついて見せるが、洋子は酒や煙草をのんで逆に昭平をびっくりさせる。しかし、やがて雄太とみどりの結婚は、かほる、昭平の活躍、それに相手が雄太ならぬ昭平と知...
第十二作
江戸城大奥では、将軍の子を身ごもった二人の女、側室の環(行友圭子)とお千加の方(松尾嘉代)の権力争いが繰り広げられていた。そして大目付の板倉将監(小池朝雄)と組んだ大奥総取締役の錦小路(久保菜穂子)の企てで、敵対する人間が次々と殺され、それは眠狂四郎の仕業として広められた。そのため、江戸市中では、眠狂四郎が血と女に狂ってしまったと大騒ぎになっていた。そんなある日、狂四郎は白昼堂々、お庭番の集団の襲撃を受け、これを退けるが、その帰路で出くわした、大奥の女小夜(藤村志保)に兄と間違われた。狂四郎は、小夜の兄が自分の名を騙った張本人であろうと思い、問い詰めるが…
1980年に早稲田文学賞を受賞した三石由起子の小説を、青春映画の旗手藤田敏八監督が映画化。ヒロイン弓子役に田中美佐子が抜擢され、大胆なヌードも披露している。
女子大生弓子(田中美佐子)は、かねてから憧れていた予備校の中年講師三村(山崎努)と酒を飲み、酔いつぶれて三村の愛人和子(加賀まりこ)の部屋に行く。そこで弓子は三村に関る人がすべて傷ついていながら、それぞれの愛を終らせようとはしていないことを知るのだった。
妻もあり、愛人もいる中年男との半同棲生活を送る女子大生の心理を淡々と描いているが、どちらかと言えば藤田監督の視点は前作『スローなブギにしてくれ』と同様、山崎努演じる中年男に向いている。そのせいか本作品に描かれたヒロイン像は、万人に共感を持って受け入れられるものではないだろう。最後に三村へ別れを告げる弓子の姿も、何やら遅れてきた女性の自立...