夕陽を浴びながら輸送船が航行して行く。その船内では、敵前上陸を前にして肉親に手紙を書く者、配給の酒を酌み交わす者、軍歌を歌う者そのいずれもが緊張感を隠し切れなかった。第二分隊長玉井伍長(小杉)は部下の13名を集め、自分が倒れた時は坂上上等兵(井染)を分隊長にして戦うよう、後事を託して訓示を終えた。そして、小隊長山崎少尉(荒木)の発した上陸開始まで休めの言葉はあったが、眠りにつく兵隊は誰もいなかった。やがて、漆黒の中で輸送船は目的地に達した。小艇に乗り移った玉井伍長は、番号を呼称させて13名のいることを確認した。陸地を踏んだ兵隊達を待ち構えていたように、激しい敵の軽機関銃の音が響いた。泥の中に散った玉井隊は直ちに応戦の火蓋を切った。だが、艦砲の援護射撃や飛行機の爆撃も効果が無かった。中隊長の命令で後退の伝令が来た時、乗本一等兵(秋見)が敵弾に倒れ...
夏子は人々が情熱を見失っている現代に愛想をつかし、函館の修道院へはいるために渡道した。彼女の母、祖母、伯母の三人は夏子の身を案じてあとを追って来た。青函連絡船のなかで、夏子は一人の青年と知り合った。彼は自分の恋人秋子を喰い殺した気狂熊を見つけて仇を打つ決心だった。夏子はそうした彼の情熱にひかれて、修道院入りをやめて毅の熊狩りに同道することになった。二人が訪ねた秋子の実家大牛田十造の家には不二子という秋子の妹がいて、毅が夏子を同道したことに大いに不満そうだった。やがて支笏湖畔に気狂熊が現われたという報に、毅、夏子、不二子、夏子の母、祖母、伯母までもが一緒になって出かけて行った。そして毅は見事に熊を仕とめて一躍熊狩りの英雄にまつりあげられた。そうして得意の毅から結婚を申込まれたが、夏子は急に彼に対する興味を失って、再び修道院へはいろうと決心した。しかし不...