昭和二三年、GHQ民政局次長チャールズケージスは新内閣を野党第一党民主自由党を中心とした連立内閣とすることを要望し、総理大臣には民自党幹事長山崎猛が望ましいと伝えた。しかし、党長老松野鶴平の強引な奇策、吉田の側近林譲治の必死の巻きかえし、さらに党総務会における一年生議員田中角栄の大胆な発言などによって形勢は逆転し、一〇月一五日第二次吉田内閣が成立した。吉田は、みずからの勢力を拡大するため議会の解散をはかり、翌二四年選挙において民自党は圧勝、この時以来吉田学校と呼ばれるようになる吉田派は大量の新議員を誕生させる。二月一六日、第三次吉田内閣が発足した。吉田はまず平和条約草案の作成のために外務次官太田一郎を中心とするプロジェクトチームを極秘で結成、太田らは血のにじむ苦難の末、吉田の要求に答える草案を作り上げた。続いて再びマッカーサーと会見、池田...
看護婦の阿部潤子(黛ジュン)は、同じ病院に勤める青年医師北野(山口崇)を愛していた。しかし、出世を夢みる北野は、坂口教授(小沢栄太郎)の令嬢輝子(佐藤友美)に、熱をあげていた。そんなある日、潤子は北野に付き添って出かけた往診先のマンションで火事にあった。一人とり残された潤子を助けたのはボクサーの森田(森田健作)だった。それから数日、北野からボクシングの切符を貰った同僚梨技(中山千夏)が、潤子を観戦に誘った。それは、偶然にも森田の試合だった。潤子は、自分の命を救ってくれた森田の勝利を祈った。試合終了後拳闘クラブに森田を訪ねた潤子は、お礼に小うさぎのマスコットを贈ったが、森田は「人形よりは、死にそこないのあなたの方に興味がある」とぶっきらぼうに、話すのだった。潤子は、そんな森田に好感を持った。そして二人は森田の郷里伊豆でお互いの愛を確かめあった。やがて、...
二十歳に成長した南海子は豊かな原家の長男と婚約も決ったので、父国紀から初めて実母に会いに行く事を許された。母柳子は十八年前、南海子と隆介の二子を残して小此木の許に走った女であった。想像とは余りにかけ離れた派手好みの柳子に、南海子は大きな失望を抱いた。原の会社で造った香島丸の初航海記念パーティの席で、南海子は小此木の息子信也に逢った。南海子の従妹香苗は、愛情のない原との結婚は、考え直した方がいいと忠告する。南海子は信也が柳子のため実母節子を追出されて悩んでいる事を知り、二人の心は急速に近づいた。これに気づいた原は、バアの女鈴子との関係をかくしながら国紀に南海子との結婚式の日取りを繰上げさせた。涙のうちに式は終ったが、新婚旅行は追って来た鈴子に邪魔され、南海子は香苗の家にかくれた。そして信也との恋は深まるばかりだったが双方の親は許さず、信也は南海子を千葉...
「弁天小僧」でタッグを組んだ伊藤大輔(監督)宮川一夫(撮影)市川雷蔵(主演)が、本作では歌舞伎の演目「与話情浮名横櫛」の映画化に挑戦した。特に撮影と美術の美しさは特筆もの。
蝋燭問屋の養子だった与三郎は、店の実子である弟に家督を譲るため、放蕩三昧にふけったあげく家を出てしまう。木更津で得意の三味線を弾いていた与三郎は、そこで料亭の女将お富と恋仲になる。しかし彼女は網元源左ヱ門の愛人であり、与三郎は源左ヱ門の部下たちからリンチを受け、体に三十カ所以上の傷を負った上、海に投げ込まれてしまった。女歌舞伎の一座に助けられた与三郎は、女役者のかつらに慕われたことが原因で一座を抜け出した。一年後、偶然再会したかつらに、人殺しの濡れ衣を着せられ…。
昭和二十一年--戦後の混乱と荒廃の真只中に、元ニュースカメラマンの松木徹夫は、戦地から復員してきた。品川駅頭に迎えにきた妻の久美子や、取材にきた先輩カメラマンの姿をみて、彼は再び昔の情熱を呼びさまし、報道映画社のカメラマンになった。妻と二人の苦しいながらも、楽しい生活を築きながら、松木はニュースカメラマンとしての生き甲斐を、激しい情熱を燃しながら感じていた。下山事件でのスクープも、松木のファイトの賜だった。一たびアイモを持った彼は、他人では出来ない離れ業もやってのけた。沖合で炎上する油漕船に、小舟を乗りつけ、沈没寸前の船上で決死の撮影をして、みんなをアッといわせたのも彼だった。いそがしい仕事のあい間には、出産間近かの妻と散歩をしたり、新しい自分たちの家の計画をたてたりした。しかし、メーデー事件の日に、撮影に熱中したあまり、乱闘にまきこまれ、松木は...