浅間山麓の曽根集落は、水源地の問題で土地の人々と土建会社の間に争いが絶えない。講演会の途中、大沼博士に随行して実業家立花公房の別荘を訪ねた少壮植物学者幾島暁太郎は、立花の秘書斎木素子に思慕の情を寄せるが、素子の本心が掴めず悩んだ。まもなく妻と別居中の立花がとつぜん謎の自殺をとげ、素子は立花が投資している土建会社の社長田沢の秘書になった。二年間も幾島を慕いながら、打ち明けずにいる大里町子は友人の尽力で幾島に会うが、彼が素子を恋していると知って悲しくも諦めようとした。一方、素子から曽根集落の黒岩万五のような野性的な男が好きだといわれた幾島は、一切を清算して紀州の自然科学博物館に就職した。ある日、幾島は見学団の中に町子の姿を見出したが、町子は憤りをこめた眼で逃げ去るのだった。そのころ、素子は田沢の指図で立花別荘をホテルに改造するため、浅間山麓にあったが、水...
A woman's husband died that summer. She is well off and lives in a villa with her servant. The two reminisce about their younger years. The woman's older brother died in the war. Many of her brother's friends wanted to marry her, but she was uninterested and chose a man fifteen years her senior who was a painter. She travels to Nagasaki with her dead husband's ashes now and als...
「スターリン重態」の号外の鈴が雨の巷になっている日、日産新報の若い外信部員木垣は、AO通信記者ハワードハントを出迎えに羽田に車をとばした。その羽田で木垣は乗客名簿を本社に電話連絡したが、その中にオーストアはの男爵ティルピッツの名をみいだして外信部副部長原口には愕然とした。ティルピッツこそかつて彼が上海で苦杯を喰まされた動乱利権屋なのだ。原口の妻京子は夫の収入にあきたらず種々サイドワークに狂奔しているが、ティルピッツの出現を知ると、彼に近づき巨額の米ドルを受取る。原口を通して右翼の情報を提供するという条件つきである。原口と紙幣をはさんで衝突した京子は、日毎自堕落な生活に浸るようになる。スターリンの死が発表された。ティルピッツは日産新報の赤色分子立川に資金を提供し、ひそかに左右の激突をはかる。事件、そして動乱がおこれば、金がもうかる。彼の常套手段で...